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四つの最後の歌
 今回は、リヒャルト・シュトラウスの「四つの最後の歌」について書きます。
 私はこの曲が大好きで、中でも第二曲「9月」が何よりも好きで、この世で一番美しい歌だと思っています。もし不慮の死を遂げたらば、この曲をどうか葬送の際にかけてほしい、と大事な友人に頼んでいるくらいです。これが聴けたならば、迷わず成仏できる気がするのです(本気)。

 リヒャルト・シュトラウスと言えば、楽劇「サロメ」を始めとするオペラの傑作群、そして何より映画「2001年宇宙の旅」で有名な「ツァラツストラはかく語りき」の第一曲目でしょう(最近はこれよりもボブ・サップの入場曲として有名でしょうか。あ、サップも古い?)。
 そのシュトラウスが、晩年、床にありながら書き続けた曲の中でも、飛びぬけているのがこの四つの最後の歌、と言われています。シュトラウスの曲は、似たフレーズが繰り返し現れることも有名です。ですから、初めて聴く場合でも、シュトラウスっぽい、とすぐに気付くこともあります。

 しかし、(あくまで私にとって)四つの最後の歌は格別に、まるで別人の作曲のように響くのです。
 一番最後に書き上げたという「9月」のあの最後のホルンソロ(曲順は、シュトラウスの希望で作曲順になっていない)。シュトラウスは病弱で、何度も死に苛まれそのつどそれを音楽にぶつけ、「死と浄化」などの名曲を書いてきたが、このいよいよ死ぬか、という人の生命力、創造力はどうだろう。あまりにも美しい、悲しい様で死を肯定的に受け入れようという叙情に満ちたメロディーを、シンプルで音の少ないソロを、死の間際になって、いまさらこの希代の大作曲家が生み出すのだ。

 死ぬことは普通怖いことだとイメージされているけれども、そのエネルギーが前向きに昇華されると、人間はこんな力を与えられるのか、と感動を覚えずにはいられません。きっと、シュトラウスも若い時分に死と戦った時には、まだ生きたい、という「希望」を見出していたと思いますが、この曲を書いたときには、まったく違う達観した世界から音楽を産み落としていたのではないでしょうか。単なる音楽なんですけれども、曲を深く理解するためには、こういう視点というか、作曲者の心情や、周辺の知識はとても重要な役割を果たすと思います。

 「9月」ばかりについて書いてしまいました。がほかの三つももちろん素晴らしいです。歌詞はドイツ語ですが、もし訳も見ず、ドイツ語もわからず聴いたら、果たしてどんな感想を持つのだろう、とたまに考えます。それ位に明るさというか平穏な、安らかな気分に満ちているからです。

 ちなみに、私の「四つの最後の歌」の印象は、グンドラ・ヤノヴィッツ(S)/カラヤン指揮・ベルリンフィルの演奏によるところが非常に強いです。カラヤンはオケ曲ではアンチの方も多いですが、歌曲やオペラには非常に定評があるのですね。「カラヤンはつねに歌手のために魔法の絨毯を敷いた」とはジェシー・ノーマンの言葉(国内盤のライナーノーツから引用)。まさに言葉どおり、ベルリンフィルは完全にヤノヴィッツに寄り添い、全てが同調して一体となって聴き手に迫ります。
 



 
 歌詞は、1「春」2「9月」3「眠りにつこうとして」が日本人にもなじみの深いヘルマン・ヘッセの詩で、4曲目の「夕映えのなかで」が唯一、シュトラウスがもっとも好きだったというアイヒェンドルフの詩が使われています。

 ところで、通常この曲はこれまでも表記したように「四つの最後の歌」と書かれるのですが、この「最後」って何の最後なのか疑問があります。シュトラウスの作曲順として、最後の歌曲(もしくは単に、曲)である、という意味なのか、それとも人生の末期に書かれたという意味を持つべきものなのか、二つ思いつきます。まず、もし後者ならば「最後」ではなく「最期」であるべきなのは当然です。そして前者は、順番としては「最後」、だけれども、同時に「最期」でもあるのだから、やありこの場合も「最期」がしっくりくると思うのですがどうなのでしょうか。原語では両方含んでいそうで日本語表記の云々は不毛な気もしますが、、。「四つの最後の歌」と「四つの最期の歌」。若干印象違ってきますね。


 あまりにも有名な曲の、あまりにも有名な演奏を私がいまさら取り上げるのも何なのですが、私の人生に深く根をおろしつつあるこの偉大な音楽に、やはり触れずにはおれませんでした。ご存じない、という方はぜひ、お手にとってみてください。


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【2007/08/03 23:56】 | 音楽 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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